上野樹里主演映画『幸福のスイッチ』インタビュー(2)

「こんなに便利だとは信じられませんでしたね」 映画『幸福のスイッチ』プロデューサー 東北新社 伴野智さん

(2006.9.29)

上野樹里主演映画 『幸福のスイッチ』 は、ハイビジョンカメラで撮影され、編集にはカノープスのEDIUSが活躍した。
今回は、この映画のプロデューサーである伴野氏に、映画のこと、編集という仕事のことについて、話していただいた。

幸福のスイッチとはどのような映画なのでしょうか?

伴野  最近、インディーズは「とんがった」作品が多くなっています。若者向きの作品が多いのです。その中で私は、映画を楽しむ人と作る人のニーズがずれてきていると感じていました。シニア層に向けたメッセージを大都市だけでなく地方にも向けたいと考えていました。つまり、映画の売り上げは東京が半分を占めます。単館であれば、その傾向は一層顕著になります。若者だけでなく、幅広い人たちに見てもらえるような、一極集中とは違った提案をしたいと思っていました。
客層についても、メジャー映画は観客が20代女性だけのような映画が多いですが、30〜40代の男性など今まで見なかった人に対しても提案したかったのです。

テーマの選定と、そのメッセージについてお聞かせください。

上野樹里主演映画 『幸福のスイッチ』 の一場面
上野樹里主演映画 『幸福のスイッチ』 の一場面

伴野  「Nationalのお店」は全国に2万店あり、地方の個人商店として経営しています。地域密着型の商売で、お客さん一軒一軒と濃密な人間関係を築いています。だから、その店主さんと顧客は新しい客層になると考え、最近は暗い話の多い電器屋の現状にエールを送る意味も込めて、このテーマを選びました。しかし、それには松下さんの宣伝協力があったことも大きなポイントです。

地元との密着という点ではどうでしょうか?

伴野  和歌山県田辺市から補助金が出たこともあり、地元と密着し、連携して企画を進めました。地元の「オークワ」はシネコンまで経営する大きなスーパーで、ダイエーやジャスコなどより大きいのですが、オークワの協力も得て、和歌山130万世帯にチラシを配布したり、オリジナルグッズを配布するなどの企画を考えています。
地域に愛される小売店の話ですので、今までの顧客とは違うところに訴求したいと思っています。また、松下系列店の合同展示会※でのプロモーションを展開しています。

※販売店(Nationalのお店)は商品買取で販売するため、高額商品はすぐに仕入れず、地域のお店で合同の展示会を開催して、顧客に見てもらっている。

制作する上で特に気を遣った点などはありますか?

伴野  松下のCM映画にはしたくありませんでしたので、感動しながら見てもらえる仕掛けを考えました。地元のフィルムコミッションと連携を密にし、チケットの販売まで地元のボランティアが手伝ってくれることになりました。今年の弁慶祭では、映画祭を実施しようという企画も持ちかけ、地元のイベントと密着したビジネスを行っています。

制作の進め方はどうでしたか?

伴野  特に問題も無くスムーズにいきました。安田監督はいろいろなことを自分でやりたがりまして。普通はスタッフに任せるんですが。自分で自分の世界を具現化しますので、時間がかかりました(笑)。粘り強くて、諦めないんです。とことんこだわって。実はハラハラしました(笑)。

映画『幸福のスイッチ』プロデューサー 伴野智さん
映画『幸福のスイッチ』
プロデューサー 伴野智さん

ところで、伴野さんが映画に携わるきっかけは何かあったのですか?

伴野  実は最初は漫画家になりたかったんです。アルバイトでイラストや漫画を描いていたのですが、ある時全く描けなくなりました。どうしても納得がいくものが描けないんです。そして体を壊したのをきっかけに映像の世界へ入りました。
簡単な方へ行ってしまったのかも知れません。映像は目の前にあるものを撮ればいいんです。絵を見て涙を流す人は少ないですが、映画ならいるはずだ、と。同じ表現をするのであれば、映像が良いと思ったんです。
最初は自主制作で撮り始めました。監督になりたかったんですね。今でもそうです。ただプロデューサーも悪くないと思っています。監督もできるプロデューサーになりたいですね。
2分間の和歌山のプロモーション(PV)も自分でカメラを背負いました。手作り感覚を大事にしたいと思っています。

映画制作でノンリニアを導入するメリットとは?

伴野  こんな便利だとは。信じられませんでしたね。ハイビジョンのものをこんなに手軽にできるとは思いませんでした。
映像業界で10年過ごしまして、βカムでジョグを使いオフライン編集もやっていました。そこでは編集すると画が荒れるというのが常識でした。これがデジタル化で、編集しても画が荒れない。革命的でした。
そしてノンリニアの登場で編集のやり方が変わってきました。常識だったと思っていたことが覆されてきたんです。ハイビジョンは時間が掛かるものと思っていたのがノンリニアでできてしまいます。100万円のREXCEED(カノープスの編集システム)でできてしまい、プロデューサーとしても、その結果にまったく問題が無いんです。大変なコストダウンです。

上野樹里主演映画『幸福のスイッチ』ポスター

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