

(2006.6.20)
最近では、多数のテレビ局に導入されたり、劇場用映画で使用されたりと非常に活用の場が広がっているEDIUS。 今度も発売を記念して、開発者のナマの声を届けてみたい。
前回は実際のプログラムを行った人間ばかりを集めたが、今回は企画担当、開発部長も交えて、ざっくばらんに語っていただいた。
早速ですが、今回、このタイミングでversion 4のリリースが行われた理由などはありますか?
[ 開発部長 ] 開発としては、「Pro 3を開発」、「Pro version 4を開発」…、って感じに製品単位でやってるんじゃなくて、ずーっと区切り無くEDIUSを改良し続けているんです。それを、いつメジャーリリースするか、いつマイナーアップデートするかというのは、開発状況や市場状況から判断しています。企画によって決まる感じですね。
[ 企画担当 ] EDIUSは一番最初のバージョンを3年前に出して、それから1年経たない2004年のはじめに「2」が出て、その年の終わりに「Pro 3」を出して・・・と、少々急ぎ過ぎた感があり、ユーザーもついていくのが大変だったと思うので、2005年は「3.5」の無償アップデートや、安価な「3 for HDV」の企画にとどめました。今回は開発を続けていた成果や市場の状況から判断して、非常にいいタイミングでしたので、メジャーバージョンアップをすることになりました。そろそろメジャーリリースして、「EDIUS、ちゃんとやってます」ってのを表明したかったし(笑)。
今度のバージョンアップにおける改良のポイントは?
[ 企画担当 ] 発表会等で言ってることの繰り返しになるかもしれませんが、まあ設計理念としては、現在のユーザー層に応じた、求められる機能を追加していき、その上でパフォーマンスを落ちないように作った・・・と、言っているんですが、ホントなんですよね?(笑) → 開発者達に向かって
[ 開発者達] ホントですよ!(笑)
[ 開発リーダー ] 新機能の開発だけでなく、基礎部分のパフォーマンスのさらなる改良も行っています。
ところで、カノープスは2006年の春、トムソン・グループの傘下に入り、同グループの映像機器メーカーであるグラスバレー社との協力体制によるシナジー(相乗)効果を発揮したいと表明しています。このことは、EDIUSの開発方針に何か影響はあるんでしょうか?
[ 企画担当 ] EDIUSの目指すところは変わってないです。カノープスとして注目してるのは、グラスバレー社が持ってる繋がりですよね、すでに多数の映像関係のルートをもってるという営業面の相乗効果の話。業務系でのノウハウ、あとは同社の製品群---カメラとか、サーバとかそういったものと連携してもっと広くつながっていけるようにするってことですね。
[ 開発リーダー ] EDIUSの開発は、これまでもこれからも、日本のカノープスで作っていきます。
日本で作るということのメリットは何かあるのでしょうか?
[ 開発リーダー ] 編集システムを作るには、ビデオカメラのメーカーとの情報のやりとりが実は凄く重要です。編集は、撮影や記録フォーマットと切っても切り離せないものですからね。そしてそのビデオカメラメーカーって、ほとんど日本にあるんですよ。
そうか、ソニー、パナソニック、ビクター、キヤノン・・・、そう考えたら日本ってすごいですねえ。
[ 開発リーダー ] だから日本語ネイティブでやり取りが出来るってのはそれだけでとても有利なんです。で、海外で自前の業務用カメラを持ってるほぼ唯一に近い会社は、グラスバレーなんですよ。同じグループの。
なるほど!カノープスは世界一編集ソフトを作りやすい環境にいるのかもしれませんね。
[ 開発部長 ] あと、日本で作るメリットかどうかわからないんだけど、放送局の人いわく、放送の画質に世界一こだわってるのは日本じゃないだろうか?と。
[ 企画担当 ] 海外は割り切りがいいんです。映画などの世界ではものすごく画質にこだわってるけど、例えば報道なんかでは、画質なんかより効率が大事、と考えてるようです。
[ 開発リーダー ] 報道までHD化されてるのは日本国内くらいですよ。取材から伝送から、HD機材を揃えて・・・
[ 開発部長 ] あとアマチュア制作や、ちょっとした企業VPとかでも画質に厳しいのが日本。HDのキレイさなんかも一番こだわる。
[ 企画担当 ] まあ、海外の人が画質にこだわらないってわけじゃないですよ、ただ、画質に最も厳しい日本で揉まれた結果として出来た当社の高画質性能が、海外でも認められたってことではないでしょうか。
他社ソフトの研究とかはしてますか?
[ 企画担当 ] もちろん研究用の他社機材は用意してますけど、他社ソフトを使っているユーザーの声をきくのが早道で、今回もヨーロッパのAVIDオペレーターを呼んで意見を聞いたりはしました。
[ 開発リーダー ] 「他社ソフトにある○○の機能をEDIUSにも付けて」と言われたら、「なぜその機能が必要なの?」というところまでさかのぼって、ユーザーはその機能を使って何をしたいのか、もっと良い解決方法がないかを考えるんです。その最終目的をいかに実現するかにおいて、他社には他社の流儀があり、うちにはうちの流儀があります。何も考えずに他社ソフトを真似て同じようにすることは簡単ですが、それだと超えることはできなくなります。
[ 企画担当 ] 他社ソフトから乗り換えてほしいという意味では、「より良い」と思ってもらえるように研究してます。
既存ユーザーではなく、新規ユーザーに対して言える訴求ポイントはありますか?
[ 企画担当 ] 他社との比較で言いたいのは、今までと同じ、リアルタイム性やオープン性です。
[ 開発リーダー ]
あと大きいのは、投資額に見合っただけの機能。つまりコストパフォーマンス。 EDIUSにはハードウェア・ターンキー版もあって、上位機種からソフトパッケージ版まで値段差はすごくあるんだけど、全部おんなじ使い方で、プロジェクトファイルも互換。そういうのってあんまりなくて、某A社なんて完全にセグメントで切っちゃってて、上位パッケージを買わないとあの機能は使えない、とかが多くて。
そういう差別化をしていないところは、良いところでもあり、悪いところでもあり(笑)。
[ 企画担当 ] 大盤振る舞い(笑)。
[ 開発リーダー ] 商品としては、引き算でセグメントをきりたくないんですよ。最上位バージョンから、この機能削りました、この機能削りました、という分け方はしたくない。足し算でセグメントをきっていきたい。ノートパソコン1台でも一通りなんとかなって、ターンキーのHDWSを導入すればSDIで本格的に使えて、それを複数台揃えたらプロジェクトのシェアが出来て、ネットワークシステムが構築できたり。
アマチュアの中には、さらに低価格のバージョンを求める声もあるかもしれないですが?
[ 開発リーダー ] それは企画の人に(笑)。
[ 企画担当 ] どうしても難しいのは、そういう人たちの目的に合ったソフトとは何かってことで、あとは値段との折り合い、マーケットのサイズとも比較検討しながら検討していくといったところです。HDVの編集だったら「EDIUS 3 for HDV」で充分出来てるから、それこそ機能を削ったと言われるものでなく、目的に即したものを考えたいですね。
話は変わりますが、EDIUSの事例としては、多数の放送局にHDWSシリーズ(EDIUSベースの業務用HDターンキーシステム)が導入されたと聞いています。
[ 開発部長 ] 局への導入実績と一口に言っても、1台目なのか、2台目3台目なのかというのは全然違ってまして…、去年の後半から2台目3台目がどんどん増えていってます。
それはどういう違いなのですか?
[ 開発部長 ]
放送局では、1台導入いただいて、使えるとなったら2台目3台目を導入いただくことが多いんです。だいたい試験導入はしますからね。だから他社さんも含め、「1台入れた」では実績としてはまだ評価できないと思います。局の片隅でホコリをかぶってるかもしれない。
ですが2台目3台目の注文が入るってことは、1台では足りなくなるくらい使ってくれたってことで、そういう意味ではまさにEDIUSは本当の意味で使っていただけていると実感しています。サポートが忙しいのも、使ってくれてる証拠です。使ってなかったらサポートもいらないわけで(笑)。
なるほど、その通りですね。
[ 開発部長 ] あと放送局では、系列との関係などもあり、1機種でなく様々なカメラやフォーマットを扱うこともあるようです。例えばHDカメラでも、HDCAM、 DVCPro-HD、P2、HDV・・・と。そういう意味でも、変換無くあらゆるフォーマットが扱えるEDIUSは有利だったりしてますね。
画質においても、導入先に満足いただけていますか?
[ 企画担当 ] (価格帯が) ワンランクも2ランクも上の製品と比較されて遜色なく、圧縮を繰り返しても、落ち着く(それ以上劣化しなくなる)のが早い、と評価を得ています。画質についての不満は聞いたことがないです。
非圧縮ではなく 「圧縮コーデックを使用している」 という時点で抵抗感があったりはしませんか?
[ 企画担当 ]
放送局レベルでは全く問題ありません。皆さん、カメラで圧縮してるのをご存知ですから。リニアとの違いは聞かれますけど、そこでは負けていませんから。逆に、お墨付きをいただいています。
ちなみに、超高品質のコマーシャル制作の業界になると、そもそもVTR自身まだ入っていけてない部分(フィルム撮り)があって、そこを攻めてもまだ仕方ないと考えているところもありますね。
「現在のユーザー層」と一口に言ってもアマチュアからテレビ局までいろいろあると思うんですが、主にどの層の意見を取り入れることが多いですか?
[ 企画担当 ] 開発にはずっと区切がないので、その時々の声のよく集まってくるところの意見…ってことになりがちですね。海外ではユーザーフォーラムが多いです。
[ 開発リーダー ] HDWS(ターンキーシステム)が急速に広まったので、局(テレビ局)の意見が大きくなったのは確かです。
[ 企画担当 ] その言い方だと、他のユーザー層の意見が軽視されてるみたいに思われちゃうかもしれませんが、実は言われることってユーザー層によってそれほど違わないんですよ。
[ 開発リーダー ] 若干、優先順位が違うだけだよね。だから局以外の層の人もその辺りは安心してほしいです。
[ 企画担当 ] 直接、編集オペレーターさんにインタビューして声を集めたりもしています。そういうのは生の声ってことで、印象は大きいですね。そういうふうに集めてきた意見を、企画や開発で「これはほしいよね」と絞り込んでいって、あとはリリースまでの時期を考慮しつつ製品としてまとまるように、「やれるだけやる」ってとこですね。理想を言うとキリがないし・・・。
次に、プログラマーさん達に聞いてみます。今回特に「あそこを作るのは大変だった」などという話はないでしょうか?
[ プログラマー達 ] 自分で自分のとこを大変だったというのも・・・(苦笑)。
[ プログラマーB ] まあ、一番大変なのはタイムラインでしょう。ミドルレイヤー、つまりデータベース管理のところですね。
基礎部分ですね、そこのブラッシュアップで、今回のレスポンスの向上を?
[ プログラマーB ] そこはレスポンスというより、開発を進める上で全部そこを経由してプログラムが組まれるので責任重大なんです。ユーザー的には目に見えにくいところですが、そこで年中苦労してます。
[ プログラマーC ] レスポンス向上というのは僕が結構対応してました。スクラブを速くしたり、トリムをひっかかりにくくしたりとか、PLR/RCDの切替を速くしたりとか、レンダリング速くしたりとか・・・、ちょこちょこと1年くらい前からやってました。
他に、自分の担当した部分について何か語りたいことがある方、語っていただけませんか。
[ プログラマーD ] GUIの描画は、「2.5」のころから比べるとかなり良くなったと思うんですよ。描画の更新スピード、ちらつきの低減。僕は、入社したときからGUIをやりたくて、ユーザーの目に入るところをやりたかった。そのあたりは良くなってきてると思います。
レスポンスの向上にも役立ってますか?
[ プログラマーD ] うーん、やはり描画より実際の機能部分のほうに応答時間がかかってますが・・・。タイムライン周りとか、もっとずっと速くできる余地があると思いますよ、まだまだ改良していかないと。
えっ、一応今でも、EDIUSが最も軽い・速いと言われてますが、まだまだだと?
[ プログラマーD ] そう、他社はウチより遅いんですよね・・・、正直、何やってるんだろう?と思います。
[ プログラマーA ] 描画については、某・他社ソフトは速いよ。
[ プログラマーD ]
あのソフトは、描画めっちゃ端折(はしょ)ってるんですよ。うちは端折れない作りになってるから・・・。あれはそれでいて、実際使う場合には問題がないように見せる回避の仕方がうまかったりしますね。
でもGUI担当としては、そういうやり方でなくちゃんと描画して、チラつきゼロを目指したい。他のソフトではみんなチラついてるんで。目悪くなりますよ、みたいな。
EDIUSをこれからどうしていきたいかと、それに至るまでのステップとしての今回の新バージョンについて、一言お願いします。
[ 企画担当 ]
ユーザーが誇りをもって使えるものにしたいですね。値段で誇るって感じじゃなく。そうですね、車で例えると、高級車でなく、安くても性能の良い車。「この車を選ぶ貴方って、センスあるね!」って感じに。 まあ、誇りとかは後からついてくるものでもありますけどね。
実際、ここ数年で事実上消えてしまった編集ソフトもあり、その中で生き残らせていただいた以上、ついてきてくれたユーザーを今後も後悔させないようにしたいです。
[ プログラマーC ]
EDIUSの基礎体力の向上、といいますか、もっともっと無駄を省きたいです。新機能ばかりを追いかけてて、ものの作り方自体に結構特徴なくなってきてるかなって気もしてて。
ホンダのモノの作り方みたいに、「とりあえず最高出力のもの作っちゃえ、じゃ次にそのパワーを維持したまま燃費をよくしよう」というような作り方をしてみて、基礎的な部分をもっと上げていきたいです。
[ 開発リーダー ] 要は、使っている人や今から使おうとしてる人にどれだけ魅力的に見えるかなので、それは今からわかってくるものなんじゃないかな。実際出して使ってみたら、あ、足りないねって部分もあるだろうし。
[ 開発部長 ] 最終的に行きたいところの絵は描けるんだけど、いきなりそこへは辿り着けない。作るのも難しいですが、それではユーザーも誰もついていけない。段階を重ねて、導いていきたいです。そういう意味で「version 4」は最終ではないけど中途半端なものでもない。1つのステップとして必要なステップだと思っています。
EDIUSはこれからも日々、進化していくわけですね。期待しております。本日はありがとうございました。